醒めない夢

囁きは秘め事の如く 1 彼との出会い

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イケメンノンケ大学生が、バイト先の男性上司に次第に惹かれていく物語♪小説家になろうに掲載していたものを閉じて、ブログに持ってきました。4話の短編に加筆修正して、全9話になっています。...

囁きは秘め事の如く 2 気になる彼

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「鳴海真聡です。よろしくお願いします」 緊張を隠し、頭を下げた。「どうぞ、座って下さい」「はい」 穏やかな口調で着席を勧められ、鳴海はパイプ椅子に腰掛けた。 姿勢よく座り、目前に座る面接官を真正面から初めてまともに視界に捉えた時、思わず鳴海は瞠目した。 ――この人、すげえ、美人系のイケメンだよ……。 和風で涼やかな顔立ち。後ろに流した黒髪。色白で艶やかな肌。男にしては赤い唇。 男性なのに綺麗と形容した...

囁きは秘め事の如く 3 どうしても離れたくない

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 決起大会という名の飲み会当日。 夏休み決戦に向け景気づけという意味もあり、費用はほぼ会社持ちだ。バイトはただで飲み食い出来、社員の手出しも少額で済むため、出席率は高い。 悩んだあげく、鳴海が参加することにしたのは、雪野も参加するらしいと小耳に挟んだからだ。 バイト終了後、ホテル近隣の御用達の居酒屋に、仲間と連れ立って向かった。「鳴海くんが来てくれて嬉しい」と隣を歩く篠原が喜んでいるが、鳴海はそれ...

囁きは秘め事の如く 4 こんな気持ち、知らない

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 二人きりになれるなら、どこでも良かった。 たまたま目についたカラオケ店に、雪野を連れ込んだ。 狭い個室。暗い照明。 雪野はどこか不安げで、そんな様子がますます可愛く、儚く見えて――。 ――おい。雪野さんは男だぞ。俺よりずっと年上で、しかも上司だぞ。なのにさっきから可愛いとか。失礼過ぎるだろっ!「鳴海くん。何か歌ってよ」と雪野の声に、鳴海は我に返った。「は、はいっ。よ、喜んでっ」 せっかく雪野と一緒に...

囁きは秘め事の如く 5 抑えられない嫉妬

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 午後九時過ぎ。バイト終了後、自転車で直接、雪野のマンションに向かった。 建物の下から、五階にある彼の部屋を見上げた。 窓に灯りは点いていない。 雪野の帰宅時間は遅い。彼は毎日残業している。昨日までそれを素直に信じていた。だが今日は違う。彼の過去の恋愛を知ってしまった。それは未練たっぷりの恋だ。「支配人に……家に来いって……言われてたな……」 自転車をマンションの駐輪場に停めた。 いかにも住人のように振...

囁きは秘め事の如く 6 切られた関係

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 雪野は睡眠不足のまま出社した。 鳴海も一緒に家を出たが、大学は夏休みで、バイトは夕方から。 何の気兼ねなく、ゆっくり休めてしまう自分の状況が、腹立たしい。「ちゃんと寝てから来るんだよ」 最後まで優しく気遣ってくれる雪野に、鳴海は彼の体調を心配する気持ちすら伝えられなくて、そのまま黙って別れた。 彼への恋情は募る一方なのに、素直になれなくて、二人の関係はおかしくなるばかり。 どんより落ち込んで家に...

囁きは秘め事の如く 7 募る恋情

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 ぼやけた視界に映る天井に全く見覚えがない。 ゆっくり体を起こして周囲を見渡した。 下半身を覆うピンクのベッドカバー。同色のカーテンの隙間から漏れる光。女物の洋服がかかった壁。インテリアから判断してここは女性の部屋と疑うべくもない。 素肌への感触から下着は身に付けているのが分かる。だが上半身が裸の自分に、鳴海はさあっと血の気が引いた。「……鳴海くん……起きたの……?」 斜め後ろからの声に飛び跳ねそうな程...

囁きは秘め事の如く 8 あなたが好きです

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 暦は九月に入った。 昼近くに目が覚めて、久しぶりに一日何も予定がない日だと、鳴海は思い至った。 バイトは珍しく休み。 大学の夏期休暇は、後一週間残っている。 昨夜、友人の綾瀬から【明日、遊ばね?】とメッセージが届いていた。今夏はバイトばかりでほとんど学校の友人とは会っていない。何の気無しに了解の返信をしようとして、手が止まった。 ――あいつのことだから、女とか、連れてくるんだろうなあ。 そう考えた...

囁きは秘め事の如く 9 胸を高鳴らせるものは(最終話)

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 数十分後、鳴海は雪野のマンションにいた。「はい、どうぞ」 まだ涼しくない室内。エアコンの室外機の音がベランダから低く響く。ソファにそわそわと落ち着かなく座る鳴海に、雪野が冷たい麦茶が入ったグラスを出してくれた。「すみません……いただきます」 鳴海は一気にそれを全部飲み干した。細身とはいえ、成人男性を乗せて自転車を漕いだ体は、思いの外体力を消耗していたし、水分を欲していた。 一息つくと「着替えてくる...