醒めない夢

雨宿りの恋 あらすじ

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喫茶店で働く聖人(あきと)は、常連客の広瀬に密かに思いを寄せている。雨降りの夕方、広瀬が店の軒先で雨宿りをしている姿を見かけ、勇気を出して声をかけ傘を手渡した。これをきっかけに広瀬と親しくなる聖人。だが広瀬に長年付き合っている恋人がいることを知ってしまう。そして聖人にも広瀬には絶対隠しておきたい後ろめたい過去があって……。こちらの作品は、エブリスタ、ムーンライトノベルズにも掲載しています。2015/10/24 ...

雨宿りの恋 01 prologue 

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 急に厚い雲が立ち込めたせいでテーブルを片付ける聖人(あきと)の手元が暗く翳る。 ふと窓の外に目を向けた。朝から愚図ついていた天気はとうとう雨模様に変わった。 平日の午後、ランチとディナーの間の時間帯、息抜きをする主婦達や打ち合わせをするサラリーマン等で、二十席程のこじんまりとした店内はほぼ満席だ。 ここはオフィス街と住宅地が混在した地区にある、レトロな喫茶店ラ・カシェット。 駅から徒歩五分程の場...

雨宿りの恋 02 bar

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 金曜の夜。ネオン煌めく繁華街に橘聖人(たちばなあきと)の姿があった。 雑踏と喧騒。それらが梅雨の蒸し暑さを増長させている。 一刻も早く涼みたい聖人はつい小走りになる。 大通りから一本路地に入ると小さな飲食店がいくつも軒を並べる界隈。 その中の路面店の一つの店。重厚な木製ドアを押すとそこは大人の空間、【azure】という名のゲイバーだ。 濃紺のライトが店内を青く染め、深海にいるような落ち着いた雰囲気。...

雨宿りの恋 03 close friend (R18)

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 R18表現が入ります。年齢に満たない方、表現が苦手な方は閲覧をご遠慮下さい。...

雨宿りの恋 04 promise

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 彼と初めて言葉を交わした週明けの月曜日。梅雨の合間の青空を仰ぎながら、聖人は出勤した。更衣室へ急ぐと、機敏な動作で制服に着替える。薄水色のダンガリーシャツとベージュのチノパンツ。どちらも店からの支給品だ。腰に焦げ茶のタブリエを装着すると、聖人のウェイタースタイルは完成だ。 小顔の聖人は黒縁眼鏡をかけると、顔の上半分は余裕で隠れる。前髪は眉より長くしているのは、鬱陶しいことこの上ないが、どちらもオ...

雨宿りの恋 05 rendezvous

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「も、もしもしっ?」 広瀬に食事に誘われた日の夜、早速聖人は奏多に連絡した。『なんだよ……ったく』 時刻は午後十時過ぎ。電話しても非常識じゃない時刻だと思う。だが寝てたのを起こしてしまったみたいで、奏多は本気で迷惑そうだった。「ごめん……寝てるとこ……」『いや……。ん……ちょっとやめろって……』 後半の言葉は、聖人に向けられたものではないとすぐに分かった。人の気配がする。奏多は誰かと一緒だ。誰だろう。奏多の声...

雨宿りの恋 06 dinner

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 駅から歩いて約十分。古い住宅と商業施設が混在しているエリア。若者に人気のスポットで、雰囲気が良く食事の美味しい飲食店が隠れ家的に多数存在している。広瀬に連れていかれた店もその一つで、ビルの最上階に位置する、大人の雰囲気漂うダイニングバーだった。 通されたのは個室。そこには二人用のテーブルとシートが窓側に配置されていた。「わあ……綺麗……」 聖人は思わず感嘆の声を漏らしていた。ネオン輝く素晴らしい眺望...

雨宿りの恋 07 one-sided

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「聖人くんっ、例の彼だよっ!」「は、はいっ」 猫の手も借りたいランチタイム。そんないつもの時間帯に広瀬が来店した。小林に聖人の恋心を知られて以来、彼との接触の機会が増えるようにと気を配ってくれる。それに深く感謝の念を抱きながら、聖人は彼の元へ転がるように馳せ参じた。「い、いらっしゃいませ……」「やあ、こんにちは」 この日の広瀬はいつにもまして素敵だ。この後取引先に向かうのだろう、普段のカジュアルビジ...

雨宿りの恋 08 lover

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【最近お店に来られないので、心配してます】「ああ……こんなの駄目……」 もう何度目から分からない。バイトの休み時間。聖人はずっとスマホの画面を見つめては、文字を入力したり消したりを繰り返していた。 最後に広瀬にあったのは数週間前。確かに仕事が忙しくなるとは言ってたし、週末に会って貰えないのはとうに諦めていたが、ランチタイムの来店までなくなるとは思っていなかった。気軽に「どうしてますか?」とメッセージを...

雨宿りの恋 09 kiss

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 聖人はリビングに一人佇んでいた。 広瀬は聖人に「帰るな」と言うと、真弓の背中に手を添え連れ立って廊下に出てしまった。広瀬が優しく真弓に触れている。その行為に二人の親密さを見せつけられ、聖人の胸はぎゅうっと締め付けられ苦しくてたまらない。 玄関先から二人の話し声が漏れ聞こえてくるが、内容までは聞き取れないし、聞く気もなかった。ふと時計を見ると、すでに午前一時過ぎだった。 ――どうして僕、ここにいるん...