醒めない夢

あなただけを愛して 01

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囁きシリーズ、番外編。桜庭と雪野。大学時代、馴れ初めのお話。全7話。...

あなただけを愛して 02

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僕は顔が見えないように下を向いて、急いで倒したバケツを起こした。そして踵を返して店に戻ろうとした時。 「雪野?」  僕は思わず立ち止まった。桜庭さんが僕の名前を呼んでいる? 僕の存在なんて知られないと思っていたのに。名前を呼んでもらった。ただそれだけのことが僕は死ぬほど嬉しかった。だけどここは聞こえない振りをしてこのまま立ち去った方がいい。向こうは彼女連れ。僕はお邪魔虫。だが会えないと思っていた桜庭...

あなただけを愛して 03

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 大学に入って初めての夏休み。ご多分に漏れず、僕の所属するテニスサークルでも合宿という名の旅行が毎夏の恒例行事だ。桜庭さんがメンバーであることから分かるように、このサークルには派手で裕福な学生が多く所属している。僕のようにいつも金欠の学生は少数派で、金銭的にも時間的にも相当無理をしてテニスを続けていた。  桜庭さんとは初めて飲みに行った日。なんと僕は携帯電話の番号とメールアドレスを教えてもらえたの...

あなただけを愛して 04

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 夏の慰安旅行、もとい合宿は海も山も臨める避暑地で行われた。宿泊先は想像以上に豪華なホテル。どうやら桜庭グループが所有する物件の一つらしい。桜庭さんのおかげで格安で泊まれるのだとか。それでも僕には決して一括で払える金額ではなかったのだが。 日中、近隣のテニスコートでとりあえず練習をする。桜庭さんに近づきたい口実でしかなかったテニスだが、真面目に取り組んだせいで、かなり腕前は上がっていた。同期同士で...

あなただけを愛して 05

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 僕に声を掛けてくれた女の子。顔は何となく知っているが話すのは初めて。肩に付くか付かない程のボブスタイル。目鼻立ちのはっきりした美人な子。Tシャツにショートパンツ。ラフな格好だが際どく肌を露出させ、胸の谷間と太腿をこれでもかと自慢気に見せびらかしている。だが僕は女性に性的興味が湧かない性分なので、これらに惹かれることはないのだが。気の強そうな子に見えて、僕は少し身構えてしまう。 「だって僕ら未成年だ...

あなただけを愛して 06

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「すみませ……」「昼間、ドライブ誘ったの、なんで断った?」「だって……」  僕の気持ちを知らない桜庭さん。だからこそ僕を平気で傷付ける。あなたが恋人と寄り添う場面を間近で見たいわけがないじゃないか。そう言いたい。だが僕はその言葉を飲み込む。彼にこの思いを伝えるわけにはいかないのだから。 だが桜庭さんから続く言葉は僕に大きな疑問を与えた。 「手嶌に声掛けさせたのに逃げやがって。あの後俺がどうしたと思う? ...

あなただけを愛して 07 (最終話)

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 貧血を起こしたように目の前が暗くなる。多分僕の顔は青ざめているはず。瘧に罹ったように震えが止まらない。どうして僕が桜庭さんを好きだと知っているのか? 誰にも話したことはない。秘めた思い。一生告げるつもりはなかったのに。 「……い……え……。違い……」  動揺のあまり舌が縺れて上手く喋れない。だが絶対にこの気持ちを悟られてはいけない。桜庭さんは本気じゃない。泣き止まない僕を慰めようと冗談を言っているだけ。真...

あなただけを愛して -my first time- 01

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「囁きは秘め事の如く」の番外編「あなただけを愛して」の続編。秀明目線。...

あなただけを愛して -my first time- 02

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 今年の春。入学式。 勧誘要員にキレイ目女子学生を選抜したのが功を奏したのか。次から次へと男の新入生がテニスサークル部室に連行されてくる。「じゃーん、一人確保ぉ」 女どもの嬌声が姦しく、俺は苛立たしく視線を向けた。するとそこには女に囲まれおろおろしている男がいた。横顔しか見えないが確かに見目は良さそうだ。何となく興味を惹かれた俺はそいつに名前を尋ねた。「おまえ、名前は?」 俺に話しかけられ、こちら...

あなただけを愛して -my first time- 03

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「俺、行くわ」「……次は樹里亜と遊んでね?」 俺は返事もせず立ち上がった。ひらひらと手を振る樹里亜。俺が今から他の女と会うと思っているのだろう。だが樹里亜はしつこく問い詰めたりしない。俺が鬱陶しがるのが分かっているからだ。 今から会うのは恵で、あいつは女じゃない。恵とのことを言いふらすつもりはないが、隠すつもりもない。もし樹里亜が恵とのことを知り、別れたいと切り出せば、いつでもそれに乗ってやるまで。...