醒めない夢

いくじなしと甘い毒 01

-
Confession番外編、第2弾。「男を好きだなんてあり得ない」彼女がいる颯吾。だが美貌の同級生、聖人が気になって仕方がない。ヘタレなイケメンDK、恋を認めるまでの苦悩の日々。全10話。...

いくじなしと甘い毒 02

-
   放課後の教室に裕巳が駆け込んできた。颯吾が少し遅れて部活に向かおうとしていた時だった。 「ねえ、篠原。聖人は?」「今日は部活出ねぇ日だから、さっさと帰ったぞ」「くそっ……担任に呼ばれなかったら途中まで一緒に帰れたのにぃ」  浩巳が可愛い顔を歪めて汚い言葉を吐く。担任に用を言いつけられ何やら仕事をさせられたらしい。調子のいい裕巳は担任に何かと目をかけられていて、こういう目に会いがちだ。 聖...

いくじなしと甘い毒 03

-
  「ねえ、みんな、彼女……っているの?」  ある日の昼休み。聖人がふいにこんな質問をしてきた。珍しく聖人は颯吾らと昼食を共にしている。いつもは朝比奈と旧音楽室で二人きりで過ごしている聖人。しかし今日は朝比奈が登校していないらしく、束縛から解放されている。裕巳は終日ご機嫌で、聖人の隣をここぞとばかりに占有している。 天気の良い日は中庭で昼休みを過ごす。風通しのいい木陰は絶好の休憩ポイントだ。...

いくじなしと甘い毒 04

-
   高校に入って初めての夏休み。楽しみにしていたはずなのに、颯吾の心は未だに聖人への訳の分からない思いを持て余して晴れないままだ。こんな気持ちでは美羽にも会えない。どこへ遊びに行くわけでもなく、颯吾は部活動に明け暮れた。  学校に行けば聖人に会える。聖人に会えるのは嬉しくもある反面、胸をかき乱される切なさを伴う。 「篠原くん」「橘」「はあ……暑いねぇ……」  校庭を走り終えた。夏の午後、太陽が...

いくじなしと甘い毒 05

-
   颯吾は童貞だ。キスは経験済みだが美羽とは清い関係でいた。中学生の頃、颯吾はそれ以上の関係に進むのが怖かった。早熟な男子ならこれ幸いと彼女を抱くだろう。しかし颯吾は今時にしては珍しく古風な考えの持ち主だった。美羽を大事にしたい。だから高校生になるまで美羽と体の関係は持たない。そう決めていた。これには美羽も同意してくれていた。 だが高校生になった途端、美羽が焦りだした。周りの友達が次々と処女喪失し...

いくじなしと甘い毒 06

-
   颯吾らが何も出来ない間に、三崎が聖人にそっと寄り添う。三崎に抱き寄せられた聖人は抵抗することなく、彼の胸に頬を寄せた。あまりにもお似合いの二人に颯吾は言葉が出ない。  聖人は誰が自分を救ってくれるのか、瞬時に判断しているのだ。朝比奈が去った今、次に聖人を守るのは三崎。それをすぐに察知した聖人は三崎に鞍替えした。つい先ほどまで朝比奈に愛されていた体を、三崎にすり寄せている。颯吾は聖人の変わり身の...

いくじなしと甘い毒 07

-
   この日は部活の後、颯吾は美羽と会う約束をしていた。平日に待ち合わせすることは滅多にない。しかしどうしても一緒に買物に行きたいと美羽が駄々をこねた。仕方なく颯吾はそれを了承した。 「今日の練習はこれで終わりだ。解散」  部長の雪村が号令をかける。陸上部は一年生が片付けをするのが慣習となっている。もう少し人数がいればいいのだが、この日に限って颯吾と聖人だけだ。待ち合わせの時間に間に合いそ...

いくじなしと甘い毒 08

-
   「……篠原……くん……?」  聖人が意識を取り戻した。 「橘……」「あれ……彼女さん……待ち合わせ……」  聖人は自分がどういう目に合ったのか覚えていないのだろうか。先に帰ったはずの颯吾がなぜ側にいるのか、そちらの方が気になるらしい。聖人らしい反応だ。 「いいんだ。キャンセルしたから。それより、おまえ寒いだろう?」「……寒い……けど……あ、僕……なんで」  聖人は自分が裸になっていることにようやく気付いた。そし...

いくじなしと甘い毒 09

-
   颯吾は帰り際、教師からこの件を誰にも漏らすなと念を押されていた。誰に言われなくてもそのつもりだ。聖人がされたひどい仕打ちを言いふらすつもりなど毛頭ない。ただ颯吾は翔太にだけは伝えておきたかった。翔太が口の固い男と見込んでのことだ。 「悪い……夜中に」  結局帰宅は深夜に近かった。母親の心配する怒声を無視して部屋に篭った。すぐに電話をしたのが、翔太だった。 「どうした?」「……聖人が……襲われた。俺のせ...

いくじなしと甘い毒 10(最終話)

2
  「颯ちゃん!」  美羽はナンパする男性に目もくれず、颯吾に駆け寄った。男性はまるで相手にされていないのが恥ずかしいのか、すぐにその場からいなくなった。颯吾は無言でその男性を見送った。 「ごめん……。また待たせてしまって」「ううんっ、違うよ。私が早く着すぎただけだから」  昨日の不義理などなかったかのように、美羽は明るい。それが颯吾には却って辛かった。むしろ詰られたほうがありがたいと思うのは、颯吾に後...