醒めない夢

忘却の恋人 01

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Confession番外編、第3弾。聖人の親友、香月翔太。彼の初めての恋人は美しい教師だった。真面目DKの恋と青春のお話。全41話。...

忘却の恋人 02

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   晴れて恋人同士になった翔太と江里。だからといって何が変わる訳ではない。相変わらず逢瀬は数学教務室で色気とは無縁。おっかけの女子生徒達が常駐していては何が出来る訳でもないが。江里も彼女たちの扱いには手を焼いていた。翔太は優柔不断だが優しい江里が大好きだった。それでも遅い時間になると、おっかけ女子集団を「暗くなると危ないから早く帰りなさい」という一見優しげな理由で体よく追い払ってくれる。そうしてよ...

忘却の恋人 03

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  「うわぁ、ここ、本当に僕の部屋?」  午前11時過ぎ。ようやく江里が目を覚ました。その第一声がこの台詞だ。 「まあまあ綺麗になったでしょう」「すごい……翔太、片付けのプロ?」「いやいや。ゴミをゴミ袋に入れて、服をクローゼットに収納して、キッチンに溜まっていた食器洗っただけだから」  掃除機はかけなかった。騒音で江里を起こしてしまうから。後はフローリングシートで床の埃を拭っただけ。狭い部屋だ。1時間もかか...

忘却の恋人 04

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  「翔太。君の受験が終わるまで……会うのを控えよう」  季節は秋が深まった頃。場所はいつもの教務室。放課後。既に外は夕闇に包まれている。もうほとんど生徒のいない校舎はしんと鎮まりかえっている。 「どうして? 俺、先生と会っててもちゃんと勉強してるよ」  翔太の推薦入試まであと2ヶ月。塾にも通い真面目に勉強している。たぶん合格は間違いないが油断は禁物なのも十分分かっている。 「うん……ただ、僕が気になるんだ...

忘却の恋人 05

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   翔太は気付いたら小さい公園にいた。遊具は滑り台と鉄棒のみ。憩いの場にはならなそうなありきたりで無愛想な遊び場。翔太は古びたベンチに腰掛けていた。辺りは既に真っ暗。外灯が白々と点っている。不審者注意と注意喚起する立て看板があるが、翔太は別に怖くはなかった。 何も覚えていない。江里の家を何と言って出てきたのか。どうやってここまで来たのか。ここがどこかもよく分からない。ふと脇に目をやる。翔太の自転車...

忘却の恋人 06

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   結婚を知らされた日から江里とは一言も口を利いていない。今となっては江里が3年生担当でなくて本当に良かった。間近で彼を見たら翔太はきっと号泣してしまうから。時折遠目に江里を見かけることがある。瞬間翔太には彼しか見えなくなる。真正面から見ることは叶わない。横顔だけ。少し長めの髪に隠れて全部は見えなくて。ほっそりした体つきはもっと細くなったような気さえする。  江里先生。あなたは本当に結婚してしまうの...

忘却の恋人 07

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  「だから……結婚しないで……俺が大人になるのを待ってて……」  中学生の翔太と付き合えないというなら別れは厭わない。付き合いを許される年齢になるまで江里を慕い続ける。18歳か、20歳か。いつになるか全く分からない。だが江里が許してくれるその時が来たら改めて恋人にして欲しい。それまでに江里に相応しい人間になるよう努力しよう。  突然、江里が崩れ落ちた。床に顔を付け平伏し、激しい嗚咽を漏らす。それは翔太の胸を締...

忘却の恋人 08

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   翔太は固まった。  孫。それは江里の子どもを意味する。  翔太は江里のためなら何だって出来る。先ほど口にしたこと。中学卒業後働くことだって厭わない。それが誰かの靴を舐める仕事であってもだ。しかし翔太には逆立ちしても出来ないことがある。それは妊娠すること。翔太は男だ。江里の子どもは産めない。江里の願いを叶えることは翔太には不可能だ。 「……先生の……子ども……」「ああ。僕が結婚して子どもが生まれて幸せな...

忘却の恋人 09

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  「香月くん、好きなんです。付き合ってもらえませんか?」「あー、悪い。俺、付き合うとかあんまり興味なくって」  高校に入学して一ヶ月。翔太にとって既に数回目の告白。特別教室棟の裏庭。どうやら告白のメッカらしい。またここか。毎回呼び出される度に翔太はうんざりする。 昼休みに図書室に向かっていたところを見知らぬ女子にいきなり呼び止められ、有無を言わさず連行された。相手は複数人、こちらは一人。いくら相手...

忘却の恋人 10

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   翔太は高校2年に進級した。聖人、裕巳、颯吾と再び同クラだ。聖人はまるで自覚していないが、彼を中心に翔太たちは友人関係を築いていた。 友人でありつつも、聖人は裕巳と颯吾から一方的な恋愛感情を寄せられている。聖人は当然のことながら相当鈍い男なので全く恋情に気付いていない。昔のことを語らないから分からないが、どうやら友人らしい友人に恵まれていなかったようだと翔太は思っている。なので裕巳と颯吾が仲良く...