醒めない夢

Dear my devil 第2話(04)

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「行ってきまーす」「おー、気をつけて行けよー」 午前七時半過ぎ。優月と和芭が登校すると、家には真桜と三才の百日だけになる。(泰青はまだ寝ているのでノーカウントだ) 百日は朝食後、狭い居間の片隅で一人、絵本を読んでいる。まだ字が読めないのにもかかわらず、独り言を言う様子がなんとも愛らしい。 ちらちらと百日の様子を伺いながら、台所を片付けて、ようやくほったらかしにしていた百日のもとに近づく。「もーも、...

Dear my devil 第2話(05)

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 ※ ※ ※ 時は一週間前に遡る。 真桜はその境遇では決して乗車が叶わない高級車の助手席にあって、隣の運転席でハンドルを握る男は、甘さの一切ない、近づくなオーラを放つ美形なのだが……。「ちょろいな」「え……」「まずは騙されてると考えるのが普通だろう。苦労してそうなわりには人を信じすぎやしないか」  辛辣な言い回しに、ついさっきしおらしく罪滅ぼしと彼が言ったのは、聞き間違いだったのかと、真桜は己の耳を疑う...

Dear my devil 第2話(06)

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「さっさと行ってこい」「はい!」 有無を言わさない命令口調に押される形で、真桜は反射的に助手席から飛び出した。 車外に出た途端、お迎え中の父兄らの訝しげな視線が真桜に突き刺さる。 ちょうどお迎えがピークの時間帯だ。 乗り付けた高級車は、ファミリーカーの中で悪目立ちしているのは明らかで。 顔見知りのお母さんたちが見当たらないのが幸いだった。 もしもいたら、身分不相応な高級車から出てきた訳を根掘り葉掘...

Dear my devil 第2話(07)

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「あ、あの……」「もう、いいのか」「は、はい……遅くなってすみません」「別にかまわない」 やはり待っていてくれたらしい。 それならば礼を言わなくてはならないのだが、驚くことばかりで、言葉がうまく出てこない。 真桜があわあわまごついている間に、男はポケットからあるものを取り出した。 それは携帯灰皿で、男はおもむろに吸い殻をねじ込んだのだ。 意外すぎるマナーの良さに、思わず男の手元を凝視していると。「おじ...

Dear my devil 第2話(08)

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「わあ、バスじゃないくるまだ。おじちゃんとまおちゃんとももしか乗ってないね。ひとりじめだね」 百日が普段利用するのはバスばかりだから、自家用車が珍しいのは無理もない。見慣れない車内にわくわくしているのか、キョロキョロと落ち着かない。「もも……あちこち触ったらだめだからな」「はーい」 ゴミひとつ落ちていない、清潔な車内。 きっとさっき会ったばかりの金髪の舎弟(と勝手に決めつけている)にきっちり掃除させ...

Dear my devil 第2話(09)

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 何よりも、今までのようにいくつもの仕事を掛け持ちするよりもずっと働く時間が少なくてたくさんの給料をもらえるのは、本当にありがたくて。  (それに……) 朝比奈がぶっきらぼうながらに百日に優しかったことが、真桜にとってはものすごく意外で、強面の第一印象をころっと覆すほどに効果があったのだ。 決して愛想はよくないのに、百日を抱く仕草は乱暴じゃなかった。 鋭いオーラが漂っているし、決して善人ではないのは...