囁きは秘め事の如くSS「唐揚げにレモン」

麻斗結椛

診断メーカーからお題。超短編。

今日の真聡と恵:唐揚げにレモンを勝手にかけてモメる
#同棲してる2人の日常
https://shindanmaker.com/719224



「メグー、ただいまー」

 午後十時過ぎ、鳴海真聡は仕事先から、帰宅した。
 自分で鍵を開けて、ドアを開けると、パタパタとスリッパの音がして。

「真聡、おかえりなさい」

 美しい恋人、雪野恵が出迎えてくれる。

 知り合って五年。
 二年間の遠距離恋愛を経て、ようやくこぎつけた同棲生活は、まだ二ヶ月。
 新婚ほやほやだ。

 八歳年上の彼は、出会った頃と変わらず、いや、さらに綺麗になった。
 とても三十路半ばには見えない美貌は、ノンケだった真聡を虜にしたままだ。

「えへへ、ただいま、メグ」

 出会った頃、真聡は大学生。
 恵が職場の上司で、真聡が部下という関係だったせいで、真聡は縮まらない年齢差に、ものすごくコンプレックスを感じている。

 だからこそ、大人の男を目指して、仕事もプライベートもがんばっているつもりだが、綺麗な恵に優しくされるだけで、鼻の下が伸びて、途端に子供っぽくなってしまう。

「仕事、疲れただろう?」
「ううん。メグの顔見たら、吹き飛んだ」
「またまた冗談ばっかり。ほら、手を洗っておいで。ご飯食べよう」

 本当にそうなのになあ……。

 真面目に受け止めてくれない恵の背中を、真聡は残念そうに見つめてから、洗面所に向かった。


 ※ ※ ※


 その日のおかずは、揚げたての唐揚げだった。

「わ、メグの唐揚げ、初めて! すげえ美味そう!」
「向こうで一人の時、何回か練習したんだ。いつか真聡に食べてほしいなあって」
「メグ……」
 
 遠恋中、自分のことを考えてくれていたことに、真聡は感激で胸が詰まる。

 恵はどうにもならない遠恋状態を打破するために、十年以上務めたホテルをいさぎよく退職してくれた。
 今は、伝手を頼り、全く畑違いの芸能事務所にスタッフとして勤務している。
 シフトが不安定なのは、前職と変わらない。
 だから平日に帰宅後、きっちり夕飯を作ってくれると、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「無理して夕飯作らなくていいんだぜ?」
「そんなこと気にしないで。真聡に手料理をお腹いっぱい食べてもらうのが、僕はうれしいんだから」
「メグぅ……」

 恵は、真聡に見返りを求めない。
 真聡だって当然そうだが、恵の包容力には、底がない。
 甘やかされているのは、真聡のほうで、この人には一生敵わないと、思わされるのだ。 

 そんなことを考えていると、「はい」と、取り皿に唐揚げを数個いれて、手渡してくれた。

「いただきまーす」

 箸をつけようとすると、「あ、ちょっと待って。忘れてた」と、恵がレモンを絞った。

「あ」
「ん? なに?」
「レモン……」
「レモンがどうかした? 足りなかった? もっとかけようか」

 恵が更にレモンを絞ったので、「わわ、ストップ、メグ」とその手を止めた。
 すると、恵が「あ、も、もしかして、レモン……かけない派?」と、さあっと青ざめた。

「えーっと、うん、そう、なんだけど……」

 恵が「うそ……」と衝撃を受けて、絶句し、がくんとうなだれた。

「あ、そ、そんな、落ち込まなくても、メグ、大丈夫だから」
「……ごめんなさい。僕、勝手なこと……もう、これ、食べれないね」と皿を引っ込めようとするから、真聡は慌てて制した。

「食べる! 食べるよ! 俺が今まで、食わず嫌いなだけだったから!」
「でも……」

 雪野が不安げに真聡を見つめる。
 愛おしさがぐっとこみ上げた。
 たまらず、真聡は立ち上がって、向かいに座る恵に近づき、小さな頭をぎゅうっと抱きしめる。

「ま、真聡?」
「もう、なんで、そんなに、メグは可愛いんだよ……」
「可愛いって……違うだろう。勝手にレモンかけたんだよ? もう、五年も付き合ってるのに、恋人が唐揚げにレモンをかけない主義だって知らなかった自分が……いやになるよ……」
「それがいいんじゃないか?」
「どういうこと?」

 真聡は立ったまま、恵の頭を静かに撫でる。見上げる恵が、いつもより幼く見えた。

「俺ら、付き合って五年になるけど、お互い知らないところがたくさんあるって、すげえ新鮮じゃん。俺もきっとメグのこと、全部知ってるわけじゃないからさ。これから、一緒に暮らして、知らないメグを知っていけるのが、ものすごく楽しみなわけ。分かる?」
「うん……」
「俺だって、今日一つ知ったんだぜ? メグは唐揚げにレモンをかける人だって」
「真聡……」

 恵が真聡の腹に頬をすり寄せて、甘える。

「うん。そうだね。僕も真聡の知らない部分を、ちょっとずつでも、知っていきたい……」

 唐揚げにレモンをかけるか、かけないか。
 こんな些細なことで揉めたことが、真聡は嬉しくてたまらない。

「大好きだよ、メグ」

 溢れる思いを優しく呟いて、恵の柔らかい黒髪に、そっと指を絡めた。




診断メーカーに嵌っとります。
ずっとほったらかしにしていた、
囁きシリーズ。
真聡と恵の何気ない日常を
いつか書きたくて、
診断メーカーのお題で、
一気に書きました!

お題はこのテーマでモメるんですが、
どうあってもこの二人はモメません。
てか、真聡は恵にベタ惚れなので、
滅多なことじゃ、怒りません。

うちのこでは珍しく
安定CPなので、
人気があるのでしょう。

でも久々この二人の
イチャラブがかけて
楽しかったです〜(*^_^*)

読んでくださって、
ありがとうございます_(_^_)_





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Posted by麻斗結椛

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