溺愛しすぎるデスティニー 5-1(R18)

麻斗結椛

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第5話 奈落

R18表現が含まれています。年齢に満たない方、物語の設定や内容が苦手な方は、閲覧をご遠慮下さい。

 それは、春海と合格祝いをして約二週間後の出来事だった。

 六時間目、英語の授業中。
 突然、智秋の下腹部を違和感が襲った。
 驚いた智秋は、思わず机につっぷす。

(うそ……まだ、一週間はあるのに……なんで……?)

「センセー、浅香くん、なんか、具合悪そうでーす」

 隣の生徒が智秋の異変に気づいて、板書をしていた教師に告げた。

「浅香、どうした?」

 教師が駆け寄ってくる。

 大丈夫です、と言いたいが息苦しくて、うまく喋れない。

「保健室行くか?」
「やっ……」

 教師が智秋の肩に手をかける。
 びくんと智秋の身体が跳ねた。

「す、すまんっ」

 教師は慌てて手を離すが、その顔は赤い。

(この人、ベータなのに、どうして……?)

 フェロモンにあてられたというより、智秋の色っぽい表情に教師がドギマギしたなんて、智秋には思いつきもしない。
 それに今はそんなことより、一刻も早く、薬を飲まなければ。

「せんせ……、保健室で休ませて、ください……」
「一人でいけるか?」
「はい……」

 こうしている間にも、クラスメートは所在なげに自習をしたり、お喋りしている。
 授業を中断させただけでも迷惑なのに、誰かの手を煩わせたくなかった。

 一人で教室を出た智秋は、ふらつきながら、なんとか廊下に設置してる水道にたどり着き、そこで薬を飲んだ。
 発症後に飲んでも、時間が経てば多少の効き目はあるはず。
 智秋は、上着ポケットには携帯用の注射器が入っていることを、手探りで確認した。

(保健室でこれを打って、寝かせてもらえば大丈夫……)

 おぼつかない足取りでゆっくり階段を下りていく。
 踊り場から足を踏み出そうとした時、だった。

「誰かと思えば、愛しの智秋チャンじゃん」

 階段の下から声をかけてきたのは、北園だった。
 授業中になぜここにいるのか分からない。おそらくさぼっているのだろう。
 智秋は自らの運のなさを恨んだ。だがここで無闇に反応したら、相手の思う壷。無視してやり過ごそうと決めた。

「具合、わるそーじゃん」

 智秋は階段を降り、話しかける北園の横を無言で通り過ぎようとした時、腕をとられた。

「あっ……」

 発情期は全身が性感帯に変化する。素肌への接触に、意図せず甘い喘ぎ声が漏れた。
 
「智秋チャン、無視すんなよ。こんなにフェロモン垂れ流して、俺を誘ってるくせに」
「そんなこと……するか……」
「発情期きてんでしょ? なんで薬飲んでねーの?」
「……予定より早くて……」
「あーらら。かわいそうに」

 同情の言葉は嘘だと、すぐに分かる。
 北園の表情は瀕死の獲物を見つけた、腹をすかせた猛獣そのものだ。
 ぺろりと舌なめずりする仕草に、智秋はこれから自分の身に降りかかる災いを、いやでも予感してしまう。

「なあ、浅香。アルファの前に、オメガこんな状態でのこのこ現れるのはさ、犯されても文句言えねえって、知ってる?」
「あ……」

 大嫌いな北園に耳元で囁かれて、身体の芯が蕩けるように疼く。
 身体からかくんと力が抜けて、不本意にも北園に寄りかかってしまった。

「なーんだ。智秋チャンも、やる気まんまんじゃんか」
「放せ……」
「助けてやったのに、ひどくね?」

 どうしてこんなに身体に力が入らないのか。
 授業中の廊下に人目はない。まして北園は寄付金の力と素行の悪さで一目置かれている生徒だ。もし教師が二人を見ても咎めることはないだろう。
 
 北園は抗えない智秋をまんまと校舎から連れ出し、タクシーに乗せた。

「智秋チャン、大丈夫か?」

 
 北園が、具合の悪い友達をを心配する演技は完璧だ。タクシー運転手が疑うはずがない。
 だがもはや智秋は誰かに助けを求めることも出来ないほど、性衝動を抑えるのに必死だ。

 ポケットの中の膨らみにそっと触れる。

(どうしてこれを廊下で打たなかったんだろう……)

 そうすれば、もし北園に出くわしても、すぐに性衝動とフェロモンが収まっていたのだから。
 激しい後悔が智秋を襲った。
 
 
 
 連れ込まれたのは、北園のマンションだ。
 家族の姿はない。一人暮らしかどうかまでは、判断がつかなかった。
 ベッドに静かに横たわらせてくれたのは、多少は智秋に同情しているのだと思いたい。
 彼にもし良心があるならと、必死に訴えかける。

「なあ……北園……特効薬、打たせてくれよ……」
「はあ? なに、ふざけたこと言ってんの?」

 北園は智秋の上着を乱暴に脱がせ、床に放り投げた。
 その拍子にポケットから注射器が落ちたのだろう、かちんとプラスチックの音が響く。
 
 それでも智秋は最後の力を振り絞う。

「やめてくれって……ほんと、頼むから」
「タクシーん中でどんだけ我慢してたと思うんだよ。ああ、たまんね。おまえ、めっちゃいい匂いすんな。こんな上玉のオメガ、お目にかかったことねえ」

 堪えられなくて、ぽろぽろ涙が溢れる。
 悲しみ、悔しさ、恐怖。いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、智秋はすでにパニック状態だ。

 崖の下は絶望の海。智秋は追い詰められて、一歩も下がれない。

 北園は智秋のベルトのバックルをいとも簡単に外し、ズボンと下着をずるりと引きずり落とした。

「やだあ!」
「うわ、智秋チャンのアソコ、口と違って素直じゃん」

 心は北園を断固として拒絶しているのに、身体は淫らに反応して、彼を物欲しげですらある。
 精神と肉体が分断されてしまった状態を、智秋は受け入れられない。
 見たくない現実が心を閉ざし、次第に反抗する気力を失う。
 バタつく手足の動きが収まっていく。
 
「そうそう。オメガはアルファに従順じゃないと」

 北園は智秋をうつ伏せにし、腰を高くあげる。
 尻を割られて、すぐに固いものがそこに充てがわれた。




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Posted by麻斗結椛