天使の翼 01

麻斗結椛

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夜香蘭の雫、番外編。
伊織の弟、健視点での本編+αの物語。



 俺、浜田健(たける)は三人兄弟の末っ子だ。
 一回り上の姉、絢香と、五歳上に兄、伊織がいる。

 子どもの頃、姉ちゃんにはすごく可愛がってもらったけど、十代後半でデキ婚で家を出てしまった。

 兄貴とよく遊んだのは、俺が小学校に上がる前までかな。
 いじわるでもないけど、特に優しくもなくて。
 まあ、男兄弟はこんなもんかなって感じ?

 兄貴は中学入学後、素行が悪くなった。
 授業はサボるし、夜出かけて帰ってこなかったり、喧嘩で警察に保護されたり。
 両親ともに真面目な学生じゃなかったから、ヤンチャな行為に他の家庭より理解があったみたいだけど、それでも手を焼いていた。

 なんであんなに荒れてたんかな? って思うけど、詳しい理由は俺は知らないんだよね。つうか、あんまり興味なかった。
 
 殆ど家にいなかったし、兄貴はますます遠い存在になっていたから。
 
 昔から兄貴は弟の目から見ても、すっげえかっこよかった。
 だから女子にめちゃモテる。
 うちに遊びにくる子は美人ばかり。
 どの子も兄貴にベタ惚れなのが見てて分かった。
 一方、兄貴は全然熱くなくて、クールでかっけえ!って密かに憧れてたよ。
 
 兄貴が中学三年生になってしばらくした頃、素行不良がぴたっと収まった。
 両親は「何があったのか」と不思議がってたっけ。

 俺が小学四年生の夏休み直前。

 夜の放浪を控えるようになった兄貴が、家族といっしょに夕飯を食べていた時に、突然こんな話を切り出した。

「なあ、今度のキャンプ、連れていきたいヤツがいるんだけど」

 親父はアウトドア遊びが好きで、毎年夏のキャンプが我が家の恒例行事だ。
 ここ二年は、兄貴はこのイベントに不参加だったから、この申し出に家族全員驚いた。

「別にかまわねえよ」

 放任主義の親父は、誰だとも問わず、あっさりと了解した。
 だけどおふくろは兄貴が特別扱いしている相手が気になるらしく、根掘り葉掘り尋ねていた。

「伊織。その子、友達? お母さんが知ってる子?」
「知らないヤツ。後輩。一年」
「女の子だったりするの?」
「ち、ちげーよ。男だっつうの」

 兄貴がどもるなんて珍しいし、心なしか頬がほんのり赤い。

 何、照れてるんだろう。

 どっちにしても、連れてくるのは、ガラの悪い男なんだろうな。どうせ俺なんか相手にされないだろうから、関係ないや。

 そう高をくくっていた。

 だけど、キャンプ当日。

 うちにとことこやってきたのは、とびきり可愛らしい男の子。

 これが、俺と聖人の出会い。

 百人中百人が女子と信じて疑わない飛び抜けた可愛らしさ。
 筋金入りの美少女、いや、美少年だった。

 これで性格ブスなら魅力半減だけど、性格がこれまた穏やかで優しいんだ。

 男だって分かってても、好きになっちゃうよ。
 聖人は俺の初恋の人だ。

 キャンプを皮切りに、この年の夏、兄貴は聖人と遊びまくってた。
 受験生のくせに、勉強も殆どしないで。
 そして俺はキャンプ以外はどれにも一緒に連れていってもらえなかったことは、今でも恨んでるけどな!

 たぶんあの頃から兄貴は聖人に惚れてて、弟の俺に近づかせたくないほど、好きだったんだろうな。

 聖人もあの頃から兄貴を好きだったのかなあ。  
 いや、それはないな。
 三歳年下の俺が言うのもなんだけど、聖人は十三歳にしては幼稚だった。
 友だちもいなさそうだったから、きっと兄貴が唯一頼れる相手で、純粋に慕っていただけなんだと思う。




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Posted by麻斗結椛