天使の翼 03

麻斗結椛

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 サボっているの、バレたかな?
 てっきり怒られると思ったんだけど。

「どうしたの? 質問があるの?」
「あ、うん。これ、分かんない。ね、そっちいっていい?」
「いいよ。隣においで」
 
 よかった。聖人、全然気付いてないや。

 聖人が横にずれてくれたので、その隣に入り込む。
 こたつの一辺に二人入るからかなり窮屈なんだけど、それが俺の狙いだ。

 面倒だから宿題をしないだけで、実は算数は得意科目。
 質問なんてうそっぱち。
 聖人にくっつきたい言い訳だ。
 懸命に説明してくれる聖人には悪いなあと思うけど、どうせばれないし。
 聖人は年下の俺を可愛がりたくて張り切っている。
 そこにつけこんで、俺は聖人に甘えたりわがままをいうんだ。

 聖人に寄り添うと、いつもほんのり甘い匂いがする。
 俺は花の蜜に誘われるみつばちみたいに、聖人の首筋に顔が吸い寄せられる。
 
「分かった?」

 やべ。全然聞いてなかった。
 でもいいや。わからない問題じゃないし。

「うん。よくわかった。ありがとう。ねえ、聖人」
「なあに?」

 その頃、俺にはいっちょまえにカノジョがいた。
 ませた女子に告られて、ノリでOKしたんだけども、その子より聖人のほうが断然可愛いんだ。
 
 付き合うのは女の子なのは分かってるよ。
 でもさ、聖人、めちゃ可愛いんだぜ?
 男だから付き合ったらダメとか、ないだろ。
 付き合うなら、聖人みたいな可愛い子がいいに決まっている。

 ていうか、聖人がいい。
 聖人と付き合いたい。

 幼いなりに、かなり本気で聖人が好きだった。

「聖人……」

 見つめ合う、俺と聖人。
 すげーいい雰囲気。
 これ、チュウとかできちゃうんじゃね?

 まだカノジョとはチュウしてない。
 早熟な女子は、自分から迫って校舎の影で男子にチュウしてるみたいだけど、俺はまだ襲われていない。
 俺って、恥ずかしがり屋だから、そんなのされそうになったら、きっと逃げちゃうな。

「ただいまー」

 突然のタイムリミット。
 兄貴の帰宅が、俺と聖人、二人きりの蜜月タイムの終わりを告げる。

「あ! 伊織くんが帰ってきた!」

 ふわりとこたつを抜け出す聖人。

 あれ?
 俺は手の甲で目を擦った。
 玄関にかけていく聖人の背中に、白い翼が見えたような気がした。 

「おかえり! おかえり! 伊織くん!」
「おう、ただいま。聖人、何してたんだ?」
「あのね、あのね、健くんと一緒に勉強してたの!」
「そっか」

 すっげえうれしそうな声。
 兄貴にまとわりついているのが、声だけで分かる。
 俺が帰って来た時の何倍ものテンションの高さだもん。
 
 聖人は俺にすごく優しかったけれど、やっぱり兄貴は特別で、扱いが全く違う。 
 俺は聖人に慕われる兄貴がうらやましくてたまらなかった。



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Posted by麻斗結椛