天使の翼 13

麻斗結椛

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 ※ ※ ※


 この日は我が家を開放した、会社主催のクリパ兼忘年会。
 建築業界で人手不足が叫ばれる中、温かみある対応で離職率を下げようとする、親父の健気な策略だ。
 参加費は会社持ちだから、参加率はほぼ百パーセントだ。

 俺が従業員のおっちゃんたちと仲良くだべっている間に、気がついたら、兄貴と聖人が連れ立って消えているじゃないか!
 二人にとっては、恋人になって初めてのクリスマスイブだもんな。
 アットホームなクリパより、早々にばっくれて、ホテルにしけこみたいよな。

 嫉妬とかじゃないけど、なんとなくさみしい。

「兄貴、ずるいよな」
「たける、パパがどうかした?」

 隣に座って、チラシ寿司をぱくつく姪っ子の澄玲が、俺の小さなひとりごとを聞き漏らさないでくれた。

「ううん、なんでもねえよ。それより、兄貴たち、澄玲放ってどこ行ったんだろうな」
「なんかね、あきとのおともだちのお見送りで、空港に行ったんだって。さっき『もう帰る』ってでんわがあったって、ばあばが言ってたよ」
「そっか」

 そうだよな。
 兄貴はともかく、聖人だって澄玲を我が子のように大事にしてるもんな。
 澄玲を置いてどこかに行くなんて、あの二人にはありえないか。

 澄玲の頭を撫でてみる。まあるくて手触りがいい。
 夏から髪を伸ばし始め、今では肩を越えるくらいの長さまで伸びた。
 ツインテールがよく似合っている。

 俺にとって、澄玲は、赤ん坊の頃から面倒を見ているから、姪というより、年の離れた妹に近い。
 まだまだ小さいと思ってたのに、今年の春から小学生だなんて、俺も年取るはずだよな。
 なんて親みたいなことも思ったりする俺って、けっこうちゃんとおじさんしてる。

「ただいま帰りました」
「あ! パパと聖人、帰ってきた!」

 澄玲は俺の手を振り払って、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、玄関にかけていった。
 ツインテールがふわりと跳ねて、うさぎみたいだ。
 ふと、澄玲の姿に、昔、兄貴を出迎える聖人が重なった。
 あの頃、彼の背中に羽ばたく翼が見えたのは、全身から兄貴大好きオーラを発していたからなんだろうな。

 玄関から澄玲のよく通る声が聴こえる。

「おかえり! 聖人! パパ!」
「一人にしてごめんね、澄玲ちゃん」
「澄玲、ばあちゃんの言うこと、ちゃんと聞いてたか?」
「うん! ねえ、早くこっち来てってばあ。じいじとばあばにクリスマスプレゼント、もらったの、パパたちが帰ってから開けようって、ずっと待ってたんだからね」

 澄玲はすぐに居間に戻ってきた。
 聖人としっかり手をつないでいて、彼は引きずられるように部屋に入ってきた。

「途中で何も言わないでいなくなって、本当にごめんね、健くん」
「大丈夫。みんな酔っぱらって気づいてないからさ」
「聖人! 聖人! プレゼント開けるからこっち来て!」
「はいはい」
 
 澄玲も本当は寂しかったんだろうな。
 聖人が帰ってきた途端、甘えん坊、発動させてるし。
 傍に座った聖人の膝に腰を下ろして、クリプレを自慢げに見せていた。

「健、澄玲の面倒見させて悪かったな」
「別にいいよ」

 兄貴は俺の隣に座り、ビールを飲み始めた。
 ふと兄貴の雰囲気が和らいでいることに気がついた。
 
「伊織さ、なんかいいことあったのか? 顔、緩んでるんぜ?」



明日、最終話です。




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Posted by麻斗結椛