大好きだから意地悪したい -和也と聖人-

麻斗結椛

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恋チョコ、超短編。
お題は診断メーカーからいただきました。

和也が聖人に切羽詰まった声で「意地悪したい…」と言って頬にかぷかぷ噛みつくと、怒って胸元をポカポカしてきました。
#大好きだから意地悪したい
https://shindanmaker.com/716347


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恋するDK、チョコ・ラブポーション


 教師の俺と、生徒の聖人が抱き合える場所は、限られているから、人目につかないよう用心しながら、俺の家に橘を連れ込んだ。

 橘聖人。
 れっきとした男子で、俺の勤める高校の生徒。 
 いろんな意味で面倒な相手で、告られた時は正直迷惑でしかなかったのに、断るのが惜しかったのは、彼が絶世の美少年だったからだ。
 興味本位で告白を受け入れて、気づけば、俺も橘に夢中になっているのだから、救いようがない。 

「だめ……広瀬せんせ……放して」
「俺のこと、好きなのに? なんで?」
「だって……はずかしい……」
 
 俺の腕の中で、俯き、震える制服姿の橘。
 抱擁になれない年齢不相応な初心さが、俺の庇護欲と嗜虐心をそそるなんて、気付いてさえいない。

「これぐらいで恥ずかしがるな」
「はい……」

 もっと困らせたくて、彼のなめらかな頬に唇をかすらせ、そのまま首筋に寄せ、鼻をこすりつけた。
 聖人からはいつも甘い体臭が漂っている。
 一度かいだら癖になる、媚薬のようなそれに囚われて、淫行寸前の衝動にかられているのは、俺のほうだ。

「橘は男子とは思えないほど、細くて可愛いな」

 耳元で甘くささやくと、聖人がびくんと震える。
 おまえの頬に手を添えて、そっと顔をあげさせた。
 不安に潤んだ瞳。蒸気した頬。半開きの小さな赤い唇。
 中学、高校時代に付き合ってきた女子に、ここまで美しい子はいなかった。
 男でも女でもない。おまえはほんとに不思議な生き物だよ。

「ごめんなさい」
「え?」
「僕、女の子だったらよかった……」

 俺が首をかしげると「そしたら、せんせい、僕を好きになってくれたでしょ?」と可愛いことをおまえがいうから、俺は目眩がした。

 もともと恋愛に関する倫理観は緩いし、チャンスがなかっただけで、男との恋愛に抵抗はない。
 おまえみたいな綺麗な子に、一途に俺を思いを寄せてくれていて、ほだされないわけがないというのに。
 だからとっくにおまえを好きになっている。
 ただそれを伝えていないだけだ。
 思春期にありがちな、頼れる成人への憧憬。
 きっとおまえの抱いてくれる思いはそれで、恋慕と勘違いしているだけだから、いつでも擬似恋愛を終わらせられるよう、逃げ道を残しているんだ。
 本当は、おまえのためと言いつつも、禁断の恋愛に嵌まらないための自戒だ。

「橘は優等生だが、実はあまり賢くないな」
「ひどい……」
 
 悪辣な言葉に、おまえの黒目がちの瞳からぽろりと涙が零れた。
 なぜだろう。愛してほしいと縋るおまえを突き放して、絶望の表情を確認したくてたまらなくなる。
 大人げないと分かっていても、昏い衝動が止められないんだ。
  
「そんなおまえを可愛いと思ってるんだから、それで我慢しとけ」 
 
 好きと言わない俺の、ぎりぎりの愛の告白。
 おまえが高校を卒業するまで、俺に赦された愛撫は子供だましの抱擁だけ。
 一応俺にも教師としての体裁がある。
 据え膳を食えない試練を卒業まで味わうことに、申し訳ないけどおまえを道連れにするよ。

「……せんせいの、ばか、いじわる……」

 いじけた様子で、俺の胸をぽかぽか殴る姿に、小さな笑いがこみ上げる。

「意地悪な俺を好きなおまえは、物好きなヤツだ」
「……だって、いじわるな先生が、好きだもん……」

 そう言うと、おまえは長い睫毛に彩られた瞳を伏せて、くたりと俺の胸に頬を寄せた。
 ためらいなく頼る、華奢な身体が愛おしくて、俺は柔らかい黒髪にキスを落とした。

 突然、俺の腕の中に飛び込んできた、天使。
 卒業の日まで、俺を好きなままでいてくれるだろうか。




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Posted by麻斗結椛