I wish for 01

麻斗結椛

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「天使の翼」の続き。
伊織と聖人。恋人になって初めてのクリスマス。
二人きりイブのお話。
隔日更新です。


 クリパ兼忘年会が続く夕刻。
 伊織の元妻である瑠璃が、澄玲を迎えにきた。
 彼女は去年再婚している。
 澄玲はクリスマスの夜を、そちらの家族と過ごすことになっているのだ。

 伊織は玄関先で瑠璃と言葉を交わした。

「旦那がね、澄玲のために、部屋中クリスマス仕様にデコレーションして、サンタのコスプレ衣装まで買って、めっちゃやる気なのよ」
「相変わらずテンションたけえな、園川さん」

 瑠璃の再婚相手、園川はいい人だ。
 二人の馴れ初めは不倫だが、伊織にまったく思うところはない。
 伊織は瑠璃をとうとう最後まで女として愛せなかった罪悪感から、むしろ喜んで離婚し、二人を祝福している。
 今年の夏、二人に子どもが生まれた。
 だがどちらも実子と差別なく澄玲を溺愛している。
 特に園川は伊織より甘やかすし、過保護だ。
 それをありがたいと思う一方で、実父としては少々複雑な気持ちになる。
 澄玲の父親は、伊織だ。
 他の誰かに父親面されるのは、本当は面白くない。
 しかし、そんな自分勝手なわがままは、口が避けても言わないのだが。

「それにしてもさあ、やーっと聖人くんと二人きりになれるわね。あたしに感謝しなさいよ、伊織」と瑠璃に恩着せがましく言われて、伊織はむっとする。
 元妻は、伊織と聖人の関係を知っている。
 時折茶化すのは、心から祝福してくれているからと分かっているから、伊織も本気で怒ったりはしない。
 瑠璃が澄玲を預かってくれるこの日を、伊織は指折りまっていたのだから。

「うるせえなあ」

 図星すぎて照れくさく、反論の声音も弱めになってしまう。

「ママー」
「澄玲!」

 その時だ。澄玲が廊下をかけてきて、瑠璃に飛びついた。
 後ろから聖人がとたとた追いかけてきて「澄玲ちゃん、これ、忘れてるよ」と白い毛糸の帽子を頭にかぶせた。

「瑠璃さん、おまたせしてすみません」
「ううん、全然よ。澄玲の支度、ありがとね、聖人くん」

 中学時代、瑠璃は聖人を嫌っていた。
 だが今ではすっかり仲良しで、にこにこ話す二人の様子に、伊織は時の流れを感じてやまない。

「じゃあね、聖人」
「ママにいっぱい甘えておいでね」

 聖人が愛おしげに澄玲の頬をそっと撫でる。
 名残惜しそうに見えるのは、きっと気のせいじゃない。
 聖人は実子のように澄玲を溺愛しているのだ。

「澄玲、わがまま言うんじゃねえぞ」
「はあい」

 澄玲が手を降って玄関から出ていく。
 瑠璃はドアが閉まる瞬間、(いおり、ファイト!)と口をぱくぱくさせて、小さくガッツポーズを決めてから、ドアの向こうに消えた。

「あいつ、まじでムカつくな」
「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもねえ。それより、俺らも、そろそろ帰るとするか」



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Posted by麻斗結椛