I wish for 05

麻斗結椛

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 ※ ※ ※



 唇に柔らかい何かが触れている。
 身体を温かい温もりで撫でられている。

「ん……」

 うっすら開けた視界。
 常夜灯のオレンジの光の中、聖人の眼前にあるのは、伊織の顔だ。
 聖人が小さく声を上げたにもかかわらず、伊織はかまわず聖人の唇をやわやわと甘噛する。

「い……伊織……くん」
「聖人」

 鼻先が触れる距離。
 キスはいったん止むが、聖人の肌の滑らかさを味わうような手の動きは、そのまま続いている。

「なんで起こさないんだ?」
「だって……よく寝てたから」
「このまま何もしないで、朝を迎えてもよかったってか?」
「ちが……そんなんじゃ……」

 だが寝込んだ聖人が悪い。
 謝罪の意味を込めて、顔を上げ、首にすがりついて、伊織に口付けると、彼の身体がびくんと震えた。
 仕掛けられてばかりのキス。
 聖人からの積極的な行為に、驚いたようだ。
 だがすぐに応戦してくる。
 深く何度も重なる唇。絡める舌先。
 くちゅくちゅと甘い水音が聖人の下腹を疼かせる。
 伊織のキスのテクニックに聖人が太刀打ちできるはずがないのだ。

 どうしよう。気持ちいい。

 無意識に腰を揺らめく、
 唇をつけたまま、伊織がくっと笑った。

「腰、押し付けて……。もう、我慢できねえの?」
「……うん」
「聖人のスケベ」
「もう……意地悪しないで……」
「ばか、そんなんじゃねえよ」
 
 首に巻き付く腕を静かに外された。
 伊織は聖人の手のひらを下腹付近にあてがわせる。
 そこはしっかり反応していて、聖人の喉がごくりと鳴った。

「伊織くんが……早く欲しい」

 どうしたんだろう。
 今すぐ、伊織に貫かれたい。
 狂おしいほどに、愛されたくてたまらない。

「あわてるなって」
「痛くてもいいから」

 すぐには受け入れられない男性の身体の不便さが呪わしい。
 叶えられない願いに、涙が溢れる。
 これほどまでに伊織と身体を重ねることを切望していたと、自分でも気づいていなかった。

「なあ、おまえとのエッチは性欲処理じゃない。優しく大事に抱かせてくれ……」

 潤んだ眦に、優しくキスを落とされる。
 愛しい気持ちが溢れて止まらない。
 
「舐めても舐めても、涙、出てくるな」
「ご、ごめんなさい……」
「いいよ」

 伊織は聖人のパジャマのボタンを一つ一つ外していく。
 ひやりとした冷気が胸や腹に触れた。
 腕を袖から抜いて、両手で伊織の頬を包んだ。

「ほんと、おまえは可愛いな」

 これから身体を貪るとは思えないほどの、慈しみに満ちた柔らかい声だった。

「おまえが好きだ。ずっと、ずっと、中学の頃から、おまえだけを思ってる。大事にしたい。こんなに愛おしい存在は、おまえ以外にはいない」

 聖人は涙をにじませた大きな目で伊織を見つめた。
 首筋を吸われ、温かい手のひらが聖人の薄い脇腹を優しく愛撫する。

「僕も、伊織くんが、好き」

 ひとりぼっちだった聖人に、ただ一人手を差し伸べてくれた人。
 先輩であり、友人であり、兄であり、初恋の相手。
 そして、ようやく恋人に。
 
「愛してるよ、聖人」
「うん……」

 僕も、という返事はキスに飲み込まれた。



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Posted by麻斗結椛