俺のつれないヴァンパイア 02

麻斗結椛

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「そんなあ……私は君に助けてもらって、とても感謝してるんだよ。だから君がいない間、せめてものお礼におさんどんだってしてるじゃないか」
「おさんどんって、おまえ、意味分かってんの?」
「えっと……台所仕事のこと……だよね」
「ちっ、なんで知ってんだよ。イマドキの日本の若者は意味すら知らねえってのに」
「でも、真之輔だって若いくせに知ってるよ?」
「お、俺は婆ちゃんっ子だから……って、そんなことどうでもいいんだよ。日本人じゃねえくせに物知りすぎるおまえがおかしいんだから」
「えー、人種差別ハンターイ」

 ルーカスがピンクの唇をすねた風に尖らせる。
 見目の良さをよく理解している彼が計算高いのは、一緒に暮らし始めてこの一月で、真之輔はよく理解しているから、こんな媚に騙されることはないのだ。

「いい年した男がかわいこぶんな。てか、差別じゃねえ。おまえ、そもそも人間じゃないし」
「もう……そんなぷりぷりしないの。ほら、真之輔。こっちにおいで」
「なんでそんな偉そうなんだよ。ここは俺んちで、おまえはただの居候だぞ」
「はいはい。分かったから」

 どれだけ真之輔が怒ってもルーカスには暖簾に腕押しだ。
 意外に強い力でベッドに無理やり座らせられて、その隣にルーカスがすとんと腰を下ろす。

「真之輔」

 ルーカスの細い指が頬に触れて、びくんと身体が震える。

「さ、触んな」
「ね、何されたの? 言ってごらんよ」

 諸悪の根源のくせに、しれっと打ち明けさせようとするルーカスに腹が立つが、これ以上怒っても反応がないのは分かっていると、真之輔は観念した。

「……痴漢、された……もう何度目か分かんねえ……くそ、なんで俺がっ……」
「あらら、また? それは災難だったねえ」
「おい! なんでそんな他人事なんだよ! 全部おまえのせいだぞ! 責任取って出てけって言ってるの!」

 やはり我慢ならなず大声を張り上げてしまうが、ルーカスは真之輔の怒りをスルーして、婉容な笑みを浮かべている。

「そんな怒らないでよ。真之輔だって、私にこうされるの、嫌いじゃないでしょう?」

 ルーカスが碧い目を細めると、途端にむせかえるような色気が溢れ出し、真之輔はやばいとばかりに慌てて視線を逸した。
 
「こっち、向いて」
「……くそっ」

 頬を両手で優しく挟まれ、そっとだが強引にルーカスのほうを向かされる。
 どう抗ってみても、壮絶に綺麗で色っぽいルーカスを心底拒絶することは、真之輔には出来ないのだ。



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Posted by麻斗結椛