beach date

麻斗結椛

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溺愛シリーズ。超短編。清史郎x智秋。



 清史郎さんが保有している超高級外車の一つに乗ってたどり着いたのは、近場の海。
 いくつかの会社を経営している清史郎さんは激務のせいで、毎日帰りが遅い。なのにいつもよりかなり早く帰宅した今日「今から海に行かないか」と誘ってくれたんだ。

 誰もいない、夏の夕暮れの浜辺。
 二人で並んで歩いていると。

「智秋、暑くないか?」
「うん」 

 俺はオメガ種だから虚弱体質で、肌も弱くてと、何から何までダメダメで、ほんと情けないばかり。
 だけど清史郎さんがさりげなく俺の体調を気遣って、わざわざ涼しくて日のない夕方に連れ出してくれたのだと思うと、それだけで胸の奥が震えるほどうれしいんだ。

「清史郎さん」

 甘えたくなって、小さく呼びかけると、ちびな俺を清史郎さんが少し首をかしげて、穏やかな表情で見下ろしてくれる。
 こんな素敵な人が俺の恋人だなんて、未だに現実味がないから、存在を確かめようと清史郎さんの左手の指先を握ってみた。
 すると、そっと握り返してくれて、清史郎さんの手の温もりがじんわり伝わってきて、えへへと照れ笑いすると、清史郎さんもにっこり微笑んでくれる。

 しばらく歩いていくと、腰掛けやすそうな岩を見つけて、そこに並んで腰をおろした。
 肩を抱く清史郎さんにこてんと寄りかかる。
 藍色が強くなりつつある空と海。
 隣には愛しい人。
 何気ない幸せな日々が自分に訪れるなんて。

「やっぱり信じられないかも……」

 心の声をそのまま無意識にぽつんとつぶやいてたみたいで、「それは俺の君への思いがやはり未だに信じられないってことか?」と問われて、俺はびっくりした。

「そ、そういう意味じゃなくて、俺と清史郎さんが、その、こ、恋人になって、一緒に海を眺めてるのが嘘みたいっていうか……」
「それなら俺も思うよ。時々君が俺の恋人になってくれただなんて、夢を見ているんじゃないかって」

 いつでも自信満々の清史郎さんが、いつになく頼りなげな様子を漂わせて、俺の唇にそっとキスを落とした。

「焦がれてやまない愛しい君に、触れて、キスして、デートして……だけどこれは夢で、目が覚めたら君には未だに嫌われたままかもしれないって」

 鼻先を合わせたまま、心細げに囁かれる。
 ついこないだまで俺は清史郎さんからの求愛を容赦なく拒絶していたから、それが清史郎さんには若干のトラウマになっているのは分かってる。
 不安にならないで、今はもう、俺は、あなたのこと、すごく好きだから。
 そんな気持ちを込めて、今度は俺から清史郎さんの唇に触れてみた。
 でも慣れてないからすぐに離してしまうと、目の前には驚いたように目を見張った清史郎さんがいた。
 
 十三歳で出会った時から本当はずっと好きで、でも兄ちゃんの恋人だったから気づけなかった、心から愛しい人。

「……だから、毎朝目覚めた時に、いつも君が隣にいてくれると安心するんだ……君が、智秋が、本当に俺のだと……」

 大きな身体でぎゅっと抱きしめられ、清史郎さんのセクシーなフレグランスに包まれる。
 誰もが憧れるアルファの清史郎さんが、俺みたいなちんちくりんに縋る様が、頑是無くて、ほんとかわいくてたまらない。

「うん、俺、ちゃんと清史郎さんのものだよ。だから安心して」

 いつも頼ってばかりの俺だけど、清史郎さんが無防備に甘えてくれると、あなたの傍にいてもいいんだなって素直に思える。

 すっかり藍が濃くなってしまった空と海。
 涼しすぎる海風だけど、清史郎さんが俺を覆うように抱きしめたまま離してくれないから、ちっとも寒くないんだよ。




一月ぶりの投稿。
なかなか書けなくてですね、でも近況報告じゃああんまりかなと、久々、清史郎と智秋を題材にしてSSを書きまして、アップしました。
溺愛シリーズはお兄ちゃんの春海の話は書きかけで、でもその前に智秋の話を書いたほうがいいのかなとか、エブリスタの「遠回りの恋」は途中だからちゃんと終わらせなくちゃとか……一個一個堅実にこなさないといけないですね。




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Posted by麻斗結椛