Dear my devil 第1話(01)

麻斗結椛

-
苦労人受けくんの初恋物語。
書きながらの連載なので、
更新は週1,2ペースくらいになるかと。
かなりのんびりですが、
どうぞお付き合いくださいませ(*^^*)



第一話


 平日の午後。オフィスより飲食店の割合が大きい繁華街の片隅。
 篠谷真桜(しのたにまお)は寂れた雑居ビルの二階の、あるドアの前に佇んでいた。
 灰色のそこには【有限会社 XXX企画】と社名が掲げられている。
 真桜の隣には、石倉という自称スカウトマンが立っていて、鍵を開けているところだ。
 石倉とは、つい三十分前に出会ったばかりで、男は身だしなみはそれなりに整っていて、女性にもてそうな雰囲気だけれども、胡散臭さは隠せていない。

「どうぞどうぞ、入って入って」

 真桜の気が変わるのではないかと疑っているのか、性急に背中を押されて、たたらを踏んだ。
 背中に触れる手のひらの体温が妙に生々しくて、生理的嫌悪を感じた。
 この悪い予感は後から考えれば正解だったのだ。
 頭の中のアラームが警告を出す。引き返すなら今しかないと。
 だが真桜は自ら決断してここに来た。
 今更反故に出来るかと、元来の負けん気が発揮しないでいい場面で顔を出してしまう。
 背後で鍵が閉まる金属音がした。
 退路を立つ音だと感じた。

 事務所と称しているものの、内部は居住の造りで、真桜は「お、おじゃまします」と靴を縫いで上がった。
 細長い廊下を歩いて奥に進むとリビングらしき部屋があった。ソファセットはあるものの、壁際に配置されたオフィスデスクが住居感を相殺していた。
 ざっと見ただけでも乱雑に散らかっていて、お世辞にも整頓されているとは言えない部屋は、タバコの煙臭くて、思わず顔がゆがむ。

「ここ、座ってくれる?」
「あ、はい」 

 真桜はすすめられるがままに、リビングの端にあるソファに腰を下ろした。
 ぎょっとしたのは、隣に石倉も座ったからだ。
 パーソナルスペースを遥かに超えた距離の近さに慄き、無意識に後ずさるが、石倉はわざとか無意識か、離れるほどににじり寄ってくる。

「篠谷真桜くん……まおちゃんって呼んでいいよね」
「あ、えっと、その」

 名字でお願いします。そう言おうとしたが,次の瞬間、膝の上に置いた手に、石倉の手が重ねられてそっちに気が取られているうちに拒絶が遅れた。
 
「じゃあ、まおちゃん。さっそくインタビューしたいんだけど、インタビュー自体は隣の簡易スタジオでするんだ。機材の準備してくるから、その間少しだけここで待っててくれる?」
 お伺いをたてたわりには真桜の返事を聞かずに、石倉は隣室にさっさと消えた。
 一人きりになった真桜は、ぼうっとそのドアを眺めた。




ランキングサイトに参加しています。
クリックしていただけると励みになります。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
拍手をいただけると大変嬉しいです。




関連記事
Posted by麻斗結椛