Dear my devil 第2話(09)
何よりも、今までのようにいくつもの仕事を掛け持ちするよりもずっと働く時間が少なくてたくさんの給料をもらえるのは、本当にありがたくて。
(それに……)
朝比奈がぶっきらぼうながらに百日に優しかったことが、真桜にとってはものすごく意外で、強面の第一印象をころっと覆すほどに効果があったのだ。
決して愛想はよくないのに、百日を抱く仕草は乱暴じゃなかった。
鋭いオーラが漂っているし、決して善人ではないのは借金の取り立てを見ているから、ちゃんと分かっている。
だが窮地に陥っていた真桜を救ってくれたのも、この人なのだ。
「来週月曜日から来い」
「え、あの、それ、無理です」
「……」
ぼうっとしていた真桜はバカ正直に即答してしまって、斜めに振り向きざまにぎろりと睨まれ(やばいっ)と首を竦めた。
「あ、いえ、シフト急に変更して、他の人に迷惑かけるわけにはいかないから……せめて再来週ぐらいからがいいかなあ、なんて」
「おまえはこの時点で俺のものだ。誰よりも俺への迷惑を一番に考えろ」
(……この、俺様がっ!)
とは決して口には出来ないので、内心精一杯の悪態をつく。
だが今から朝比奈は真桜の雇い主。
絶対服従は当然なのだ。
「仕方ないから、土日二日間の猶予をやる。そこできっちり辞めてこい。いいな」
「……はい……」
逆らえるはずもなく、渋々(と気付かれないように)朝比奈の強引な命令を受け入れた。
仕事の話は一件落着したので、真桜と百日はのそのそと下車した。
後部座席を閉める間際、「あ、あの、朝比奈さん……いろいろと……ありがとうございます」とやっとお礼を言えたが、朝比奈は無言で頷くだけだった。
「がくおじちゃん、またあそびにきてねー! ばいばーい」
去っていく車に百日が大きく手を降っている。
現実とは思えない出来事がようやく終わって、真桜はほっと全身から力が抜けた。
緊張していたのが、今更ながらに自覚出来て、なんだかおかしくて顔が緩んでしまう。
「がくおじちゃんに抱っこしてもらったときね、いいにおいがしたよ」
「へえ……」
確かに車内はセクシーな香りがほのかにした。
あれは朝比奈が纏う香水だったのか。
肩車してもらった百日は、あの香りを間近で嗅いだのだ。
子どもというだけで、恐ろしいオーラを放つ男に無邪気に近寄れる百日を、ほんの少し、うらやましいと思う。
【まお……、おまえの名前か】
たった一度、名前を呼ばれた時、なぜか胸が高鳴った。だが直後、篠谷と名字で言い直され、朝比奈の、真桜とは馴れ合いたくない気持ちを感じ取ってしまい、とても胸が痛んだのは、んぜだろうか。
(百日は子どもで、俺はあの人に雇われてる身だ。百日みたく優しくしてほしいなんて……どう考えても、おかしいだろ。それ以前に、俺、子どもじゃねえし!)
自分でもうまく説明できない心境に、内心叱咤することで真桜はようやく折り合いをつけるしかなかった。
これが一週間前の出来事。
朝比奈岳との出会いだった。
第2話 完
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(それに……)
朝比奈がぶっきらぼうながらに百日に優しかったことが、真桜にとってはものすごく意外で、強面の第一印象をころっと覆すほどに効果があったのだ。
決して愛想はよくないのに、百日を抱く仕草は乱暴じゃなかった。
鋭いオーラが漂っているし、決して善人ではないのは借金の取り立てを見ているから、ちゃんと分かっている。
だが窮地に陥っていた真桜を救ってくれたのも、この人なのだ。
「来週月曜日から来い」
「え、あの、それ、無理です」
「……」
ぼうっとしていた真桜はバカ正直に即答してしまって、斜めに振り向きざまにぎろりと睨まれ(やばいっ)と首を竦めた。
「あ、いえ、シフト急に変更して、他の人に迷惑かけるわけにはいかないから……せめて再来週ぐらいからがいいかなあ、なんて」
「おまえはこの時点で俺のものだ。誰よりも俺への迷惑を一番に考えろ」
(……この、俺様がっ!)
とは決して口には出来ないので、内心精一杯の悪態をつく。
だが今から朝比奈は真桜の雇い主。
絶対服従は当然なのだ。
「仕方ないから、土日二日間の猶予をやる。そこできっちり辞めてこい。いいな」
「……はい……」
逆らえるはずもなく、渋々(と気付かれないように)朝比奈の強引な命令を受け入れた。
仕事の話は一件落着したので、真桜と百日はのそのそと下車した。
後部座席を閉める間際、「あ、あの、朝比奈さん……いろいろと……ありがとうございます」とやっとお礼を言えたが、朝比奈は無言で頷くだけだった。
「がくおじちゃん、またあそびにきてねー! ばいばーい」
去っていく車に百日が大きく手を降っている。
現実とは思えない出来事がようやく終わって、真桜はほっと全身から力が抜けた。
緊張していたのが、今更ながらに自覚出来て、なんだかおかしくて顔が緩んでしまう。
「がくおじちゃんに抱っこしてもらったときね、いいにおいがしたよ」
「へえ……」
確かに車内はセクシーな香りがほのかにした。
あれは朝比奈が纏う香水だったのか。
肩車してもらった百日は、あの香りを間近で嗅いだのだ。
子どもというだけで、恐ろしいオーラを放つ男に無邪気に近寄れる百日を、ほんの少し、うらやましいと思う。
【まお……、おまえの名前か】
たった一度、名前を呼ばれた時、なぜか胸が高鳴った。だが直後、篠谷と名字で言い直され、朝比奈の、真桜とは馴れ合いたくない気持ちを感じ取ってしまい、とても胸が痛んだのは、んぜだろうか。
(百日は子どもで、俺はあの人に雇われてる身だ。百日みたく優しくしてほしいなんて……どう考えても、おかしいだろ。それ以前に、俺、子どもじゃねえし!)
自分でもうまく説明できない心境に、内心叱咤することで真桜はようやく折り合いをつけるしかなかった。
これが一週間前の出来事。
朝比奈岳との出会いだった。
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